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第五章 石場建てと地震

地震と向き合いながら発展してきた日本の建築

石場建てについて話すと、

最も多く受ける質問があります。

「石の上に柱を乗せているだけで、本当に大丈夫なのですか。」

確かに初めて見る方は不安に感じるかもしれません。

現在の住宅では、

鉄筋コンクリートの基礎へアンカーボルトで柱を固定することが一般的です。

そのため、

固定されていないように見える石場建ては、

一見すると弱そうに感じられることがあります。

しかし、

石場建ては地震の存在を知らずに生まれた工法ではありません。

日本は昔から世界有数の地震国です。

その中で、

千年以上という長い年月をかけて改良され、

受け継がれてきた建築文化なのです。

日本は世界有数の地震国

日本列島は、

四つのプレートが重なる場所に位置しています。

そのため、

昔から数え切れないほどの地震を経験してきました。

歴史に残る大地震だけでも、

何度も建物は倒れ、

町は復興を繰り返してきました。

その経験の積み重ねの中で、

日本の木造建築も少しずつ進化してきました。

石場建ても、

そうした歴史の中で受け継がれてきた建築技術の一つです。

石場建ては「動くこと」を前提としている

現代の住宅では、

建物をしっかり固定するという考え方が一般的です。

一方、

石場建てでは、

建物がわずかに動くことも含めて考えられています。

もちろん、

自由に動くという意味ではありません。

木組み全体が力を受け止め、

建物全体で荷重を分散させるという考え方です。

柱。

貫。

差鴨居。

足固め。

梁。

それぞれが互いに支え合いながら、

一つの構造体として働きます。

これが伝統構法の特徴でもあります。

柔構造という考え方

伝統構法について語る際、

「柔構造」という言葉が使われることがあります。

これは、

力に対して全く動かない構造ではなく、

建物全体で力を受け止めながら対応するという考え方です。

木という素材は、

鉄やコンクリートとは異なり、

わずかにしなります。

その性質を活かしながら、

木組み全体で力を伝えていく。

これが日本建築の大きな特徴です。

現代の耐震設計との違い

ここで誤解してはいけないことがあります。

現代の耐震設計と伝統構法は、

目指しているものが違います。

現代住宅には現代住宅の基準があります。

伝統構法には、

長い歴史の中で育まれてきた構造思想があります。

そのため、

単純にどちらが優れていると比較できるものではありません。

重要なのは、

建物がどのような考え方で設計されているかです。

私は、

優劣ではなく、

思想の違いとして理解することが大切だと考えています。

私が現場で感じること

私は三十年以上、

伝統構法の建築に携わってきました。

古民家を修理し、

木組みを組み、

数多くの建物を見てきました。

その中で感じるのは、

昔の大工たちは地震を知らなかったのではなく、

地震と向き合いながら建築を考えてきたということです。

だからこそ、

木組みには無駄がなく、

一本一本の部材に役割があります。

石場建ても、

そうした建築思想の中から生まれた技術なのです。

強い・弱いではなく、考え方を知る

石場建てについて、

「地震に強いですか。」

「弱いですか。」

という質問を受けることがあります。

私は、

その問いに単純な答えはないと思っています。

建物の安全性は、

基礎だけで決まるものではありません。

設計。

木組み。

材料。

施工。

維持管理。

そして建物全体のバランス。

多くの要素が関わります。

だからこそ、

石場建てを見るときは、

「強い・弱い」という二択ではなく、

日本人がどのように自然と向き合い、

地震と共に暮らす建築を考えてきたのか。

その建築思想そのものを知っていただきたいと思います。

次の章では、

石場建てと現代住宅の基礎との違いについて、

構造やメンテナンス、長寿命という視点から詳しく解説していきます。

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