木の幹⑤
エネルギーの旅
パンのインターンは色々な記憶と技術をお土産に、
インターンは大大大成功だった。
フランスを後にした、私は、バルセロナ、を経由し、
クロアチアの首都はザグレブに入った。
旧ユーゴスラビア時代の面影を残す街。
石造りの建物。重たい歴史。
フランスの陽の光とは違う、どこか静かな空気が流れていた。
パンの熱を抱えたまま、
私はまた、別の土地の時間の中に身を置いた。
その前年にこの地に来ていたので、思い出深い街だった。
コンパンクトな街で、歴史を感じるこの街の空気感がとても気に入っていた。
ここには、私が輸入をするセントラルヒーテイングの薪ボイラーの製造会社である、セントロメタルがある場所だ。
首都ザグレブから車で走ること、2時間。
担当の営業である、ムラデンさんと車でお話をしながら向かった。
私は片言の怪しい英語、それでも、なぜか話は弾んだ。
iPhoneの翻訳機能も借りながらだが、車内は笑いが絶えなかった。
言葉は不完全でも、意思は伝わる。
ここでも、私の「心で話す」コミュニケーションは通じたと思う。
パンも、建築も、薪ボイラーも、
やっていることは違う。だが、幹は同じだ。
効率ではなく、循環。
大量消費ではなく、持続。
薪を燃やし、家を温める。
山とつながるエネルギー。
それを作っている場所を、この目で見た。
この頃から、私は思い始めた。
自分は、どこの国へ行っても生きていけるのではないか。
言葉が完璧でなくてもいい。肩書きがなくてもいい。
心があれば通じ、その確信が、少しずつ自信に変わっていった。
そして、クロアチアを後にし、隣国である、セルビアに移動した。
セルビアは、薪ストーブの煙突を輸入しようと、日本にいる時から、
メールで何度も打ち合わせを重ねた会社への訪問がメインの仕事だった。
セルビアは内陸の国だ。
四方を陸に囲まれ、海を持たない。
ユーゴスラビアという一つの国だった時代。
それが分断され、それぞれの国になった歴史を持つ土地。
街の中には、どこか重たい時間が流れて、戦争の傷跡が、完全には消えていない空気。
それでも、人は普通に暮らし、笑い、食べ、飲んでいる。
ここでは酪農が盛んで、肉料理が中心で、豪快で、塩気が強く、力強い味。
洗練というより、生命力。土地の重さと、人の歴史が、そのまま味に出ているようだった。
ここセルビア、ベオグラードではは薪ストーブ用煙突の輸入の許可を取り付けた。
パンの旅でありながら、
エネルギーの旅でもある。
10日ほど滞在し、朝はカフェへ。夜はバーへ。
毎日のように通い、いつの間にか行きつけになった。
ここでも、言葉は完璧ではない。
だが、持ち前のコミュニケーションで店員とも自然に打ち解けた。
戦争を経験した国。
分断を経験した国。
それでも人は温かい。
国境はあっても、人の心に国境はない。
肉も美味しかったが、ワインも驚くほど美味しかった。
フランスとは違う力強さがあった。
洗練というより、生命力。
土地の重さと、人の歴史が、そのまま味に出ているようだった。
クロアチア、セルビアと移動し、やはりここでも、
日本にいるときには味わえない、深い体験ができ、
我が人生の中でも大きな収穫になったのである。
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